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自転車活用推進計画/サイクルツーリズム なんのために? #2 猪苗代湖一周をカタチにする最初のステップ

前回の記事 自転車活用推進計画/サイクルツーリズム なんのために? #1

正直なところ、今の行政が進めるサイクルツーリズムというのはだいたいが「なんのために?」が明確でありません。トップから言われてなんとなくやっている自転車行政を「今が見直す最大のチャンスです」スタートしたから、もう方針転換できないという「行政の模範的な解答」はしなくて良いので間違っていれば一回全部リセットする勇気を持ってください。

我々は具体的なプランと行動で結果を出すのが仕事ですので
地元福島県の「猪苗代湖一周サイクリング」を題材に「交流人口を増やすことを目的とした具体的手順を示していきます」

【現状】
「猪苗代湖一周サイクリングをイナイチ」として流行らせようと福島県が進めています。

福島県(県中地方振興局)のウェブサイト
https://fuku-2.net/course/332/

このサイトを見る限りでは、動画もあり雰囲気がわかるようになっていますので猪苗代湖一周してみようかな?と思う方もいると思います。構成もシンプルによくまとまっていると思います。ところが走ってみると「媒体イメージと大きくかけ離れた現実」があることがわかります。

以前書いた記事、イナイチに見る行政の典型的なNGパターン
https://link-tohoku.co.jp/inawashiro-inaichi-20200712/
こちらをご一読ください。実際(2020年現在)の猪苗代湖一周サイクリング=イナイチはとても楽しめる環境にないのです。

なぜ言い切れるかというと「弊社のメイン拠点猪苗代湖沿い=地元住民」で「イベント屋という自転車利用者の実情もよく知る立場だから」です。
※写真は事務所から見た猪苗代湖と磐梯山

大変美しい景色を楽しんでもらいたいという気持ちは我々も強く持っていますが、サイクルツーリズムとかイナイチとかいう前に体制を作るならばまずやらなければならないことは「安全・安心に走る環境が整っているか」これが本当の意味でファーストステップ。

まずやるべきことですが後回し・おざなりにされているのが現状です。なぜそうなるか?というと、こういった仕組みづくりをする時に集まるのは国・県・各自治体に建設・土木事務所と集まるのは自転車を知らない人たちが定めます。

誰もが知るスポーツのスわかりやすい例 TBSテレビ「SASUKE」を再現すると仮定します

テレビで見ているから「わかるわかる大丈夫だ。こんな感じで作れば大丈夫。そしてみんな使ってくれる(はず)」と「誰も何も知らないままなんとなく作ってしまっている」当然過去SASUKEに参加した利用者からすれば「ナニコレ?」「これただのゴミじゃん」という評価しか残りません。

なぜそうなるかというとメンバーに
(1)利用者として実際にSASUKEを体験した人がいない
(2)コース設計者もいない。統合プロデューサーもいない(全体の流れさえわかっていない)
至極当たり前のことを「おそろかにして」進めているのがほとんどなんです。そして作った偽SASUKEが本当に安全なのか誰もわからないところが最も怖いのです。

強度の高いスポーツはSASUKEも、そして自転車も間違えば簡単に死ぬことをわかってない人が定める怖さ。行政の方にまず最初に覚えて実施して頂きたいのは「最低限の利便性」と「利用者の安全」です。ここを確実に抑えてから自転車活用推進計画やサイクルツーリズム推進などに取り組んで欲しいと思います。全般的に言えることは「主対象は現在のサイクリストではありません。一般の人が主役(主対象)」として構成することです。間違っても上級者向けのサイクリングルートを行政が設定なんてはやってはいけません。

【猪苗代湖一周の本当のファーストステップ】

(1)面する自治体(郡山、会津若松、猪苗代)ごとにスタート地点を設けE-Bikeの貸出をする

なぜか猪苗代湖一周のスタート地点は磐梯熱海にしようとしていますが、前述の通り利用者のことを考えたらやってはいけない選択です。猪苗代湖は郡山市、会津若松市、猪苗代町と3市町で成り立つので、行政間がケンカしないようにそして利用者にバリエーションをもってそれぞれの拠点から左・右周りで楽しめるようにスタートさせます。

・郡山市(郡山市少年湖畔の村)※志田浜でももちろん可。
https://www.city.koriyama.lg.jp/kyoiku_shogaigakushu/shogaigakushu/7/10895.html
・猪苗代町(道の駅)
http://www.michinoeki-inawashiro.co.jp/
・会津若松市(会津レクリエーション公園)
https://www.pref.fukushima.lg.jp/sec/41340a/aizurecpark.html

それぞれ駐車場、トイレがあり、飲食や最寄にコンビニなどもあることがスタート地点としては最低限必要条件です。

そしてなぜ複数拠点を設けるのか、郡山市少年湖畔の村=道の駅猪苗代(約22km)、道の駅猪苗代=会津レクリエーション公園(約10km)湖南町=会津レクリエーション公園(約20km)と、万が一があった場合でも助けてもらえる場所を設けるというのは利用者の利便性と安全確保には欠かせないプランです。特に猪苗代湖南西部はウィークポイントなので、郡山市のスタート地点を294号線の利活用も含め湖南町を公式に置くというのがベストです。皆さんがイメージする猪苗代湖(志田浜)と4か所にするのも良いプランです。

そして、この拠点となる部分に「レンタルサイクル(e-bike)」の貸出を設けることが欠かせません。サイクリストは自分の自転車を持ってきますが、持っていない人でもふらっと車できて自転車が借りられる(ママチャリで猪苗代湖1周60㎞はなかなかハードルが高い)具体例で言えばサイクリストの男性に付き添いで来る女性がE-bikeを借りて楽に一周回れる。この環境を用意するだけで人の流れはかなり変わります。

かかるコストも既存施設に1拠点にE-bike5台ずつ用意(1台15~20万程度)を置き、場合により郡山市で借りても会津レクリエーション公園に返せるなど協定を結べばさらに移動の手段としても活用(しまなみ海道=愛媛側、広島側それぞれから乗り捨て可能だから利用者がいるわけです)

良いサイクリングコースという前に、まず気軽に乗れる環境を作ることが欠かせません。3か所または4か所にE-bikeを配置して貸出(乗り捨ても可)これなら今からでもすぐにはじめられるコストです。

(2)要所に標識(次の目的地までの内容と現在地を示すマップ)を設置

猪苗代湖一周、初めて走る人は国道49号からどこで曲がるのかさえ標識がなく不親切極まりありません。標識すらなくサイクリングコースですか?と言いたくなります。ツール・ド・かつらおというレースを行う葛尾村(自転車に対して熱い思いを持っています)1周約30㎞あるレースコースで広大なサイズのためそのままでは迷う人が多数。お願いしたところ常設標識を立てていただきました。

猪苗代湖一周の場合、レースコースと異なり左回り、右回りがあります。その場合はアウトレットモールの地図のように現在地を示し次の要所(地点)まで何キロと示す標識を必ず設置しなければなりません。現在地から左回りに5㎞進めば高速の標識のようにガソリンスタンド、飲食、トイレ、コンビニがあると示してください。最近はナビやスマホもありますが、サイクリングコースというならば何も見ないで利用者が一周走れる環境を整備することです。これも自治体と道路管理者がOKと言えば大して労力やお金をかけることなく準備ができるのにやっていないのが現状ですね。

サイクリストならばGPXデータをガーミンなどのサイクルコンピューターやスマホでインポートしてライドでも良いですが、これはあくまでサイクリストに対してで「主対象とすべき一般の方には向きません」参考URL:https://tokyo-ride.jp/strava_osmand/

(3)最低限の補給と自転車トラブル回避のため自販機(簡単飲食と自転車用品の自販機)

人が集まらなければお店は出来ません(誰もこない土地にお店を出しても、そのお店に行くことが目的となるクオリティのお店以外は確実に潰れます)猪苗代湖一周をしてみると、飲食や休憩ができるお店は実はかなり少ないのです(特に猪苗代湖の南側と西側はかなり手薄です)

出来始めたしまなみ海道で経験したことですが、有名な場所ならば最寄りの飲食店も空いているだろうなんて思い込みをしていたら15時を過ぎたら軒並みお店がしまりコンビニもありません。腹が減って腹が減ってハンガーノックになりかけた苦い思い出があります。猪苗代湖もお店がなくお昼を過ぎればアウトという可能性が充分あります。かといって必ず入るとはわからない場所にお店をオープンする(してもらうのも無理があります)

今できる解決方法は、一番コストが低い自販機を活用です。飲み物はもちろん「日持ちがしてお腹がすいたをカバーできるようかんやカロリーメイトなど固形物」が買えること、寒い場所なので9月になったらホットの飲み物は必ず。そして、もっとも必要なものは自転車のチューブやチェーンなどが購入できる自販機を設置することです。現在県中振興局、郡山市などがレスキューポイントを交渉して設けていますが、実際にコースをチェックしてコース沿いで対応できるのは太田屋さん http://konan-ohtaya.com/ だけだったと思います(2020年12月調査)


これは郡山市の老舗スポーツサイクル店サトーサイクルさんに置いてある自転車用品自販機ですが、こんなものでいいのです。これを1周60㎞として10㎞ごとに飲み物と固形物の自販機1つと自転車用品自販機を1つ置く。これだけで飲食に困らない&機材に万が一があっても臨時対応ができる。さらに言えばごれいびつ峠(猪苗代湖コース沿い)付近に運送会社がありまして、ここに有料で致命的なトラブルがあった場合迎えにきて最寄り駅や駐車場まで例えば5,000円で届けてくれるまでサービスを整えるだけで猪苗代湖一周はわかりやすく・安全と足を運ぶ機会が確実に増えます。

かかるお金を最小限に、そして手間暇がかからず今すぐにでも対応できるプランはこれです。安心して走れる環境を用意してから、「人の流れ」について検討していかないと、利用者置き去りの頭でっかちで税金の無駄遣いと言われるサイクルツーリズムやサイクリングコースとなります。

ぜひ、行政やサイクルツーリズムにかかわる人はこの内容を、自分が済む場所に置き換えて考えてみてください。

人の流れ(サイクルツーリズム)については、また別の機会に。

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