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【関係者向け/必見】タイム計測機材(ノイズ・混信について)

Wi-FiやBluetoothという言葉は、2024年現在では誰もが知っており、日常生活に深く浸透しています。

サイクリストにとって主要な電子機器は次の3つです:

  • サイクルコンピュータ(GarminやBrightonなど)
  • パワーメーター(SHIMANO、Garmin、4iiiなど)
  • アクションカメラ(GoPro、Insta360、DJIなど)

これら通信を行う電子デバイスは、高いノイズや混信が発生すると機能しなくなることがあり
レースで使用するタイム計測機材にも影響を及ぼすことが増えています。

今回の話は、デバイスだけでなく、レース現場でおきる事象とその原因について、タイム計測機材を扱う計測業者や大会運営者向けの対策ポイント
をまとめましたので、関係者は必ず見てください「選手の結果のために」大事な部分です。

弊社は、タイム計測機材Raceresultの国内販売代理店
https://www.raceresult.com/en/home/index.php

市民レースでは大磯クリテリウムさん、バイクナビさん、バイクロアさんなど、多数の大会で利用されており、赤い計測チップをお使いいただいた経験、記憶がある方もいらっしゃると思います。

自転車レースで有名なMATRIX
https://matrix-inc.co.jp/さんの公式サイトを見てみましょう。

会社のキャッチコピー「RFIDでくらしを支えるMATRIX」と書いてありますが、レース用計測機材はRFIDというシステムで成り立っています。

RFID(Radio Frequency Identification)とは、ICタグとRFIDリーダー(読み取り装置)の間で電磁波や電波を送受信し、非接触でICタグの情報を読んだり書き換えたりするシステムの総称です。 モノや人を識別する自動認識技術の1つで、さまざまな業界で導入が進んでいます。

  1. RFIDリーダーのアンテナから電波を送信
  2. ICタグのアンテナで電波を受信し、ICチップが駆動
  3. ICチップ内のコード情報を信号化し、アンテナから送信
  4. RFIDリーダーのアンテナで信号を受信
  5. RFIDリーダーの制御部を介し、モバイル端末やパソコンなどへ情報を転送

参考資料 RFIDの基礎 より

自転車レース用の計測機材で必要な機能・原理は主に2つ

(1)潜水艦のソナーのように、ゼッケン1番鈴木一郎さんの計測チップが近くを通過していますとおおむね検知する機能
(2)ゴールに地点に敷かれているループアンテナで検知してから抜けるまで秒間あたり電波を照射し、1/1000秒などの着差を判定する機能

に分かれていますが、基本原理はどのメーカーも変わりません。

ようやく、本題に入りますが
ここ1~2年の間に近年、タイム計測の現場でISMバンドの帯域が埋め尽くされ、選手の通過データにロストが生じることが増えています。

ISMバンド(Industrial, Scientific, and Medical radio band)とは
電波の周波数帯のうち、国際的な取り決めにより産業(Industry)・科学(Science)・医療(Medicine)用の機器が免許不要で自由に利用できるよう開放されている周波数帯のこと。現代では電波は主に通信や放送など信号の伝送を目的に使われる。電波の利用は法制度によって規制されており、混信を防ぐため、原則として免許を取得して政府から割り当てを受けた周波数帯域を使わなければならない。

電波を産業や科学、医療など電気通信以外の用途で応用できるようにするために、国際電気通信連合(ITU)によって無線通信との競合を気にせず自由に使える周波数帯としてISMバンドが規定された。いくつかの種類に分かれており、全世界で共通して使用できるものと、特定の地域(ITUは世界を第1地域~第3地域に3分類している)でのみ使用できるもの、国によって受入状況が異なるものがある。

この周波数帯を用いて、電子レンジによる加熱、電力の無線送電、工業や科学研究におけるプラズマ生成などが行われている。また、免許や登録が不要で自由に発信できる周波数帯として、リモコンやラジコン、トランシーバー、ワイヤレスマイク、RFID(無線タグ)、非接触ICカード、アマチュア無線、無線LAN(Wi-Fi)、Bluetooth、ETC(DSRC)などの通信用途にも利用されている。

6.765~6.795MHzから244~246GHzまで用途や特性の異なる様々な周波数帯が指定されているが、よく知られるのは2.4~2.5GHz帯(電子レンジやWi-Fi、Bluetoothで利用)で、単にこれを指してISMバンドと呼ぶこともある。

計測機材で使う周波数は、下記2つの周波数帯を使用しています

パッシブタイプの計測機材 915MHz
パッシブとは簡単に言えば電池による信号増幅が不要(センサーを通過する速度が遅いマラソン大会などに使用)

アクティブタイプの計測機材 2450MHz
アクティブとは電池による信号増幅を行う(センサーを通過する速度が速い自転車大会などに使用)

弊社で取扱いのアクティブ型(主として自転車用)計測機材の実際の周波数・チャンネルです

2.4GHz RF & loop specification
Transponder 2.4 GHz channel frequencies 
1: 2.480 MHz / 2.405 MHz
2: 2.405 MHz / 2.470 MHz
3: 2.425 MHz / 2.465 MHz
4: 2.475 MHz / 2.440 MHz
5: 2.415 MHz / 2.445 MHz
6: 2.460 MHz / 2.430 MHz
7: 2.435 MHz / 2.455 MHz
8: 2.450 MHz / 2.420 MHz

サイクリストにとって身近な混信・干渉の具体例として、ZWIFTなどのバーチャルレース中に家庭で電子レンジを使うことで通信が中断(通称:通信落車)することがある話を聞いたことがあると思いますが、まさに状況としては「それ」です。

特に、計測機材殺しとして有名なのはドローンのトップメーカー DJI社(拡張Wi-Fi)
https://www.dji.com/jp?from=site-nav

ISMバンドを埋め尽くすことで有名です。動画は2018年自社イベントツールドかつらおで撮影をしていた際、ゴール付近で計測機材が反応しない事象をはじめて経験しました。

実際に、最近起きたタイム計測機材での混信・干渉のトラブルを2件ご紹介します。アナライザにて解析も実施。

(1)京都美山サイクルロードレース 2024-05-26
https://www.cyclingmiyama.com/miyamaroad/

西日本最大規模、2日間で1,100名のレース。初日タイムトライアルはライブ配信やドローン撮影などもなく、場所も人里離れたところのため何事もなく終了しました。ところが2日目、レースがはじまってから選手通過データの欠損がいくつか発生しました。

2日目は、ライブ配信(無線LAN使用で回線環境)あり、ドローン撮影あり(昨年はなし)、計測地点最寄りにワイヤレスマイクあり、アマチュア無線のリピーターありというタイム計測環境としては最もよろしくない状況。※昨年ライブ配信を実施しても問題がなかったので甘く見ていましたが、我々の知らないところで環境の変化あったことを後から知ります。原因絞り込みのため、アクティブ専用計測機材に変更しても通過データ欠損が発生したため2450MHz帯での干渉・混信であることが確定。

トラブルがあっても我々業者は入賞だけはその場で拾わなければなりません。当日、時間内にビデオ確認し入賞を確定させ表彰を行いましたが、その他の皆様の対応が少し遅れたことを改めてお詫びいたします。

信号強度を示すRSSIを参考として見ていただくと
レース前などは -62dBm(問題がない良好な状態)ですが、データ欠損が起きている時は-80から-90dBmとなりほぼ不通の状態。

信号強度 TL;DR 必須
-30 dBm 素晴らしい 達成可能な最大信号強度。クライアントは、これを実現するには、APから僅か数フィートである必要があります。現実的には一般的ではなく、望ましいものでもありません N/A
-67 dBm 良好 非常に信頼性の高く、データパケットのタイムリーな伝送を必要とするアプリケーションのための最小信号強度 VoIP/VoWiFi, ストリーミングビデオ
-70 dBm Okay 信頼できるパケット伝送に必要な最小信号強度 Email, web
-80 dBm よくない 基本的なコネクティビティに必要な最小信号強度。パケット伝送は信頼できない可能性があります N/A
-90 dBm 使用不可 ノイズレベルに近いかそれ以下の信号強度。殆ど機能しない N/A


(2)バイクロア白州の森 2024-05-19

https://bikelore.jp/hakushu10/

こちらも一部データ欠損が発生しました。もちろん手作業で対応し大会にご迷惑をおかけすることはありませんでしたが、計測担当者にドローンやラジコンや公衆無線LANの送信機など何か近くにないですか?と尋ねたところ、バイクロア白州の森はゴール地点すぐそばにラジコンエリアがあることがわかり対応。ラジコンが終了すると信号強度は回復といった状況でした。

また、それとは別に
(3)サイクリストの装備の組み合わせでも起きる可能性もあり

・サイクルコンピュータ Garmin
・アクションカメラ DJI
・パワーメーター 4iiiまたはGarminのペダル型

この3種組み合わせはかなり再現性が高く、データ欠損が生じます。シクロクロス大会にて、とある参加者が私毎回データ欠損がおきるんですよね・・・と嘆いていたのを聞き、環境を調べ弊社側でも、同環境を揃えたところ影響を及ぼすことがわかりました。皆さんも装備を確認していただきたいのですが

このマークがついているかを見てください。

技適マークとは https://www.ntt-bp.net/column/blog/2023/02/post-84.html

日本国内で定められた基準に適している(干渉・混信等も事前に検査機関で確認が取れている製品)という証明にもなります。自分の機材にマークがついているか一度ご確認ください。日本の店舗で買ったから大丈夫と思っていても、実際は違う場合も多々あります(並行輸入品など)

Amazonなどで販売されている製品、実は適していないものも多数あります。法律的にも販売はOKだが、電源を入れた時点でOUTという電波法の一般的にはわかりにくい状況もあり、以前多かったのはモトローラ(無線で世界的に有名な会社ですが)日本国内で使えない製品がAmazonで売られていました。人里離れた自動車サーキットでは安くて遠くまで通信ができることから使われているのをたびたび見かけ責任者に中止をお願いすることもありました。

話は戻り、識別としてこのマークの有無を確認いただくとトラブルはほぼなくなりますので参考にしてください。ISMバンドは世界共通で、厳密な制限がかかっていないため混信はおきやすい現実があります。

タイム計測業者の方、または大会主催者の方へ
電気工学、電波の専門知識が必要となりますので、専門の難しい話はしませんが「この組み合わせは必ず気をつけてください」というポイントをお伝えしますので、大会関係者と事前確認をするようお願い致します。

(大前提)
タイム計測機材(電池入のアクティブタイプ=自転車など速度の速いレース用)はISMバンド 2450MHz帯を使用しており影響を受ける場合がある。

(1)ドローン
(2)ラジコン
(3)ワイヤレスマイク
※(1)~(3)はかなり高い再現性があり、近くに設置をする際には実際に使用する機材で事前にテストを行うようにしてください。

(4)無線LAN(Wi-Fi)公衆無線LANが壊れて悪影響を及ぼしている場合もある
(5)アマチュア無線
(6)Bluetooth使用機器
※(4)~(6)状況によりますが、ライブ配信などで無線LANルーターが多段方式になっている場合は要注意です。

主に6点は混信・干渉の可能性が、2.4GHz帯が一般化されたことによって起こり得ます。
アクティブタイプのタイム計測機材を使用する場合は必ず上記6点は大会当日周囲の機材確認を行ってください。

パッシブタイプ(速度が遅いマラソン用など)は周波数帯が915MHzが多く、一般的な2.4GHzにはかぶりませんので影響はほぼありません。
現在、計測機材側で自動回避する仕組みも構築しております。機材自体の開発も進んでおりますので新製品ではカバーできるようになりますがすでに販売された製品を使う場合には、近くに(1)から(6)までの製品の使用有無を確認するようお願いいたします。

 

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