BLOG

裏方として、業界として
伝えたいことそのままに

  1. HOME
  2. ブログ
  3. 業界話
  4. 最高権威である全日本選手権自転車ロードレースに立候補する自治体が少ないのはなぜか

最高権威である全日本選手権自転車ロードレースに立候補する自治体が少ないのはなぜか

先日サッカーワールドカップが開催されました。

FIFA公式サイトより。

NTT社員が上司に2週間休みをありがとうと話題になりましたが、ワールドカップ(世界一)全日本選手権(日本一)は特別な大会です。人が集まるから価値を生む。本来であれば誘致合戦になるはずが日本の自転車ロードレースは手を挙げる自治体(開催地)がほとんどありません。それはなぜかを開催地側の目線で考えてみます。そもそも全日本選手権ロードレースの開催地公募の条件を見てみましょう。

下記は2016年の全日本選手権開催地公募文書です
公益財団法人日本自転車競技連盟

日本の競技者にとって最大の目標のひとつである全日本ロードは、開催地・開催地都道府県連盟と協力して運営されてきています。開催地につきましては、より安定的かつ長期的展望を以て早期に開催地が選定されるよう、下記基本条件のもとに開催地を公募を実施しております。

1 応募資格者 開催地都道府県自転車競技連盟または地方行政庁、もしくはそれらに準ずる組織。
2 応募要 件 原則として以下の条件を満たすこと。
(1)開 催 日 6月24日・25日の週で実施する。
(2)レース形態
① 土曜日に2カテゴリ×2レース=4カテゴリのレースを実施する。
② 日曜日に2カテゴリ×1レース=2カテゴリのレースを実施する。
③ ロードタイムトライアルについては下記から実施について選択する。
a. 6月23日(金)に開催。
b. 6月18日(日)に開催。
c. 本公募においては応募しない。

(3)コ — ス
① 公道を主体とする周回コースで JCF 基準に準拠したもの。
(原則として、適度な高低差のある周長10km 以上の周回コース)
② フィニッシュ地点は原則として周回コース上にあること。
③ オリンピックまたは世界選手権のコースと類似していること。
④ エリート男子220km、女子100km程度の距離で実施可能なこと。
⑤ タイムトライアルを実施する場合については高低差の小さい 1 周または 1 往復で 15km 以上の周回コースを基本とする。
(4)アクセス 参加選手、観客のアクセスに適していること。
(自動車、公共交通機関のいずれによっても近傍までアクセス可能なこと)
(5)準備業務負担
① 道路使用許可、その他必要な許認可は開催地行政・都道府県連盟が取得する。
② 競技に直接関わる分野を本連盟にて準備する。
③ 設営その他は協議による。
(6)競技役員
① 概ね15名程度の競技役員を中央競技団体より派遣する。
② 概ね25名程度の競技役員を開催地都道府県・近隣都道府県連盟より派遣する。
(上記人数には総務員、交通規制にかかる立哨員を含まない)
(7)費用負担 原則として、競技運営経費のうち概ね 1/3 から参加料収入を差し引いた額を開催地応募者にて負担のこと。
(8)宿泊施設 チーム、競技役員関係者が宿泊可能な十分な数が周辺で確保されること。
(概ね 1,000 名程度以上)
(9)駐 車 場
① 競技運営、観戦に必要な駐車台数がフィニッシュ付近に確保されること。
② フィニッシュ付近の駐車場には、レース・コース以外からアクセスできること。
(10)雨天対応施設
① 式典・競技運営・選手控え等、雨天対応施設のあること。
② ラインセンスコントロール、監督会議等の開催可能な会議室のあること。
(11)応募方法 応募フォーマットに記入して E-MAIL にて応募すること。
なお、上記応募要件をすべて充足することは、必須条件ではなく一部を充足しな
い場合でも応募することができる。
(12)応募期限 2016年4月末日(2017年大会)
2018年以降については開催前年の 4 月末を1次締切りとして随時募集する。
また、審査の結果、該当無しの場合は再公募を行うことがある。
(13)選考方法 書類審査・現地査察・開催応募地との協議を通じて行う。
(14)そ の 他 応募状況に応じて適宜視察を行う。

自治体側からすれば
(1)選手は期間累計で450名程度(2022年度実績)市民レースより参加者が少ない。
(2)全日本選手権は市民レースに比べれば高コストで、街の負担額は安くはない。
(3)目玉となる選手がいて観戦客が多数いればいいが人を呼べる選手がいない模様で実際は関係者がほとんど。

おそらく、成功したといえるのは2015年の那須開催くらいかと思います。理由としては東京から最も近く、当時の町長も自ら自転車乗りで那須ブラーゼンなどもできて機運が高まっていた。諸条件が揃うところでなければ、自転車を知らない担当者からすれば、同じコストを負担するなら市民マラソン大会1000名を開催した方が「確実に地域に効果がある」と判断されてしまうのが現実がありました。

これがツールドフランスであれば、わが町を通過するのは「栄誉」であるということで、誘致合戦の上で開催地がASOに負担金を支払う。それでも開催地には恩恵があるためビジネスが成り立っています。日本で成立しているのはジャパンカップ(宇都宮市)とさいたまクリテリウム(さいたま市)でしょうか。

本来ならば、JCFが舵取りをして価値を高める必要がありますが

【第57回全国都道府県対抗自転車競技大会の中止について】

など財務体質の他、人材も不足しているようでマイナスループに入っているのが現実のようです。

全日本選手権が誘致合戦になるためには、自転車ロードレースそもそもの認識と価値を向上させていかねばならない。鶏が先か卵が先かという根本的な原因がありますが、自治体担当者に街のお金を使ってスポーツ大会を開催するならマラソン大会がベストと言われないように、JCFの今後の舵取りに期待したいところです。

関連記事