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リザルトが出せない時の裏側(#1)

リザルトが出せない時の裏側

日本のシクロクロスでも、トップクラスの人気を誇る大会でリザルトが出ていません。「何が起きたのか、どうして起きるのか、対策はどうすればいいのか」我々が取り扱った大会の過去の失敗例を皆様に共有します。

選手の皆さんに、大会主催サイドの「ここを」チェックすると安定している大会かそうでない大会かの「見分け方」も合わせて教えますので、ぜひ参考にしてください。

選手の皆さんに、いくつか事前にチェックしてもらうことで、大会当日のトラブルは確実に減ります。この記事を読んでいただきご協力をよろしくお願いします

まずはじめに

(1)自転車レースの着順判定はどう定めているのか
JCF審判ライセンスやアテンダントなどをお持ちの方は理解されていると思いますが
(A)目視(いわゆる目取り)
(B)電子計測システム
のいずれか、または両方の情報を元に「審判が最終着順を判定」します。もちろん審判自体も目視でチェックしているので、最低2重で順位をチェックしていることが通常です。

(A)目視については
主催者が派遣をお願いするJCF審判ライセンスをお持ちの方が実施することがほとんどですが、このJCF審判ライセンスをお持ちの方でも、現場で目視ができるとは正直イコールとはなりません。目視自体も経験を要するため「正確ではなく実は結構いい加減」というのも現実です。

特に最後大集団でゴールスプリントになることが多いロードレースでは、トップからせいぜい5~6人チェックできたら優秀です。2級の審判はポイントレースの実技があるのである程度できますが、1日講習で取れる3級審判だと、実務経験が全くない場合もあるので、主催サイドはゴール前の審判ライセンスまたは決勝審判の経験を念の為確認しておくことをおすすめします。

プロチーム主催のレースなのに、現場に行ったら審判が1人もいなかったなんてこともありました(苦笑)

職人の域に達している方もいます。平均速度の遅いMTBやCXかつ少人数な大会は、読み上げ(1人が番号を読み、1人が記録する)で、ベテラン審判のスキルだけでカバーしてしまう大会もあります。ただ、その方たちが高齢で抜けてしまい翌年大惨事・・・で、電子計測を頼むというパターンもかなり多いですね。

(B)電子計測システム
自転車業界でメジャーなのはマトリックスさんのチップの色が青(一部緑)の電子計測システムが主流です。最近は弊社の赤い計測チップを使った電子計測システムもかなり使われるようになってきました。

自転車用計測チップの色
・青で一部緑(マトリックスさんグループ)
・赤(LinkTOHOKUが大会運営・計測か、機材販売させていただいた主催者自身で計測)

自転車用の電子計測システムは、元々の仕組みがマラソン大会からの技術応用でした。パッシブタイプ(電池で信号増幅なし)とアクティブタイプ(電池で信号増幅あり)と2種類あり自転車レースでは、9割型アクティブタイプが使われます。

なぜか?対応速度が電池なしのパッシブタイプだとだいたい40km/h までで、それ以上速いと通過データを検出することが物理的に難しく、速度が速い自転車は電池で信号増幅をするアクティブタイプでないと難しいのです。自転車でもパッシブタイプが使われることもたまにありますが、ヒルクライムかサイクリングのチェックポイント用途です。

(2)電子計測システムを使っているのに、トラブルが起きる時はどんな時なのか?

正確な選手データ作成と、正確に計測機材の設置ができれば、特段難しいことはありません。

基本的なところで
(A)エクセルで関数処理ができること
(B)ご自宅の無線LANルータ設定を、自分で1からできる程度のネットワーク知識
(C)自転車レースの流れ・ルールがわかっていること

は最低限求められます。全くのビギナーでなんとかなるかというとならない、実は奥が深い世界です。機材並べれば動くんでしょ?カメラのオートフォーカスくらいに思って機材を扱う人はだいたい失敗します。

コストを下げるために、弊社でレンタルパッケージ
https://link-tohoku.co.jp/news/race-time-keisoku-package/
も用意していますが、機材の設置だけ確実にやってください。計測地点1箇所のシンプルなものならあとはリモートでカバーで(現場に行かずに設置だけは現地の方が行っていただく)なども用意しているのは上記(A)~(C)がわかっている方に用意してます。

前振りが長くなりましたが、本題に入ります。

(要因1)
正確な計測用選手データを作ることが出来ていない

・参加者募集を行った主催者が作ったデータ自体が間違っているケースがほとんどです

自転車の場合
ゼッケン番号、名前、カテゴリ、ライセンス番号、計測チップが正しく紐づいているかがポイント

一例
34番 500Wさん エリート 07ME12345 ABCDEF01

特にゼッケン番号と計測チップ固有の番号合致はマストでこれがズレると一大事です。主催者が作ったデータ自体に間違えがあることも結構多いです。日本の場合ほとんどがスポーツエントリーやランネットなどWEBエントリーサイトからCSVファイルでエクスポート後、MS-EXCELで手作業をするためやはりどこか間違えてしまいます。

WEBエントリーデータが正確ならほぼ何もおきないのですが、例えばWEBエントリーの欄にライセンスコードの設定を忘れていて、あとから手動で名簿で紐付けをした 連盟のライセンスコードがサブデータにも紐づいていた場合

ドラゴンボールの悟空とベジータのフュージョンみたいに全くの別人が生まれるなんていうこともあります。あとは、計測チップデータ ABCDEF01が正しいのに 別なチップ CDEFGH01 を貼り付けてしまうこともとりかえしのつかない致命的なエラーを引き起こします。

101番が鈴木一郎さん チップ番号 ABCDEF01が正しいのに、102番鈴木二郎さんにチップ番号 ABCDEF01が割り当てられてしまうと、計測機材はABCDEF01は102番鈴木一郎さんと判別するので、鈴木一郎さんはリアルゼッケン101番なのに、計測機材上は102番とアンマッチです。現場でこれが起きると、ベテランのオペレータは差分をチェックしてその場で対応しますが、経験の浅い方が機材オペレートの場合は、名探偵の出番が必要になります。

雑談ですが、先日、弊社の入社試験で「現場実務テスト」を11月の埼玉の大会で行いましたが本番系統は弊社スタッフ、予備系統を入社希望者に操作させたのですが、現場で見事にチップずれを引き起こしていました。このように実務経験が浅いと結構頻繁に起きるトラブルです。

(要因2)
主催サイドの受付で計測チップ配布ミス

これも実際の現場では、かなりの確率で発生しています。(1)で正しい計測データが作れていても、配布が間違えば、計測機材上では全くの別人です。大多数の大会では、ゼッケンと計測チップが1つのパッケージに収められていると思いますが

(A)袋詰=封入の時点でずれてしまっている
人間がやることなので必ず間違いはあります。経験の浅い方や、ゼッケンとチップがズレると大惨事ということを知らない前日・当日だけのお手伝いの方は、詰めればいいやとやってしまい途中に2個入れてしまって、501番のゼッケンの袋に501番と502番のチップを入れてしまい 502番に503番の計測チップが入っている(1個ずれている)などが多いですね。

(B)受付で1001番を渡すはずが、間違って1101番などぱっと見で見落とす番号を渡してしまうケースも多いです。
チップとゼッケンは正しくペアになっているのですが、物理的に1001番の人が1101番を持っていれば、計測機材は本来1001番の人を1101番として認識します。

(C)1人が代表して受け取りにきて、親子間、チーム間でチップが入れ違っている
これもほぼ毎回起きています。同一チームだからと3名分渡して、本来A、B、Cと渡さなければならないところにB、C、Aと渡してしまう。先日もあぶくま洞HCで親子3名(パパ・ママ・お子さん)で入れ違いがありました。自転車とは異なりますが駅伝大会でも100%に近い確率で起きています。学校の先生が取りにきて XX小学校A、B、C チーム やはりA、C、Bなど混在。出走表の確認が重要です(主催サイド、参加者共に)

(我々の失敗例)
過去に、ゼッケンと計測チップを袋詰めせずバラバラに渡していた茨城県のシクロクロス大会(茨城シクロクロス)我々も経験が浅い時で、事前説明や確認をお願いせず、受付の方に当日朝に計測チップのカゴだけ渡したのですが、受付で「箱ごと間違えて渡してしまい」大惨事が発生。

本来 B-1、B-2、B-3を渡す選手に、C-1、C-2、C-3を渡していたのです。

計測はスタートの1周目が特に勝負で、1周目目視と計測機材のゼッケン番号があっているか照合していったら、全然違う番号があがってきて大慌て。途中で1人知人が走っていたため、番号がずれている基準としてチェック。目視で入賞はチェックした上で、その日のうちに全部紐解いて結果をアップしましたが、まさか箱ごと違うとは・・・という出来事でした。

(回避方法)
この失敗を元に、ゼッケンとチップは袋詰めして参加者に渡すようにしています。袋詰めした後で、ゼッケンと計測チップの番号があっているか、計測センサーを実際に通せばアンマッチは100%事前回避できます。仮に、1001番の人に1101番を渡しても、1001番のゼッケンと1001番のチップはあっていれば、後から照合や修正は格段に楽です。

(こんな例もありました)
同じ、茨城県のヒルクライム大会(最後の?ツールドつくば)で、事前作成した計測データを主催者がDNSがいたので削除して、番号を1つずつ繰り上げてしまっていたことが後で発覚。途中から全部計測チップとゼッケン番号がズレが発生。ベテランオペレータ2名で大会終了後までに全部確認して600件ほど修正したため参加者は気が付かなかったかもしれませんが、実は大惨事になりかけたことも。

沖縄県の大会でも、主催サイドでチップ渡し間違えがありました。1つだけと聞いていたのですがざっと見ただけでも5つあり、この範囲全部違いそうだと一括置換したのですが、それが実は間違いで、後から全部1つ1つ照合して当日中に対応ということもありました。

多数の人が関わる現場は漏れが出やすいです。いかに最小限にするかが主催サイドのスキルなのですが、参加選手の皆様も事前にカテゴリと出走リストを確認の上自分のゼッケン番号を確認していただくことで、大会当日のトラブルは激減しますのでぜひご協力をお願いします。実際のところ、受付前に事前に自分の正しいゼッケン番号がわかっている方は半分もいないのではないでしょうか?

LinkTOHOKUでは、事前にWEBエントリーリスト
https://my.raceresult.com/184572/participants#1_C755C6

を掲示して、皆様にご協力いただいております。

それでも、受付で間違いは出ます。根本解決としてはマラソン大会のようにゼッケンに個人名を印刷すればさすがに渡されたゼッケンが違うということは気がつきますので、自転車でも採用していくべきでしょう。

#2として、次の投稿記事で
(要因3)オペレータが正しく計測機材をセットできていない
(要因4)参加者が計測チップを正しい位置にセットしていない
についても触れていきます。野辺山シクロクロスでリザルトトラブルが起きたというので写真を眺めたら、少なくともday1では(要因3)があったことは確認できました。

次号に続きます

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